「娯楽」東京事変

娯楽(バラエティ)

賢い選択だと思う。
前作「大人」でジャジーで高級感漂うROCKを極め
また今年の春に久々のソロ名義でアルバムを出して
「林檎流」的音楽をシーンに轟かせた彼女だが
この東京事変の新アルバムにおいては
自身は作詞とVoに専念して作曲はBANDの他メンバーに任せる。
という風に活動方針をガラリと変えたのだ。
しかも初期の作品で「林檎色」を創り上げた師匠こと
Baの亀田誠治氏が僅か一曲のみの参加になっている。
したがってこの「娯楽」は新たに作曲に名を連ねた
現Gtの浮雲氏と現Keyの伊澤一葉氏の
2人の個性が満ち溢れ出したアルバムとなっている。
その２つの個性もまた只者ではなく
まず伊澤氏は「大人」でのジャジーでシックな要素を
そのまま持ち込みしっかりと仕上げた印象がある。
一方、浮雲氏は凄く奔放でシュールな曲揃いで
彼にしか表現できないような独特の世界観がある。
このように２つの異なった音楽世界が存在するが
その２つの世界の中で唯我独尊のオーラを発して
同時に纏め上げているのが椎名林檎のVoである。
各曲それぞれに対して臨機応変に表現をこなす辺りは
もうさすがであり彼女のVo魂が随所に冴え渡っている。
またもう一人別の才能を知らしめたのが亀田師匠で
曲をほぼ他メンバーに任せた分Baに専念したおかげで
ここまでやるか！？！と唸らせる四弦弾きを披露。
Drの刄田綴色の連携も良く徹底したリズムを刻み込む。
特に「ミラーボール」「OSCA」のフレーズは神業。
一方で彼が唯一提供した曲「私生活」も
あえてシンプルなバラードに仕上げることで
独特の存在感を得ることに成功している。
それにしても考え方を変えることによって
こうも革新的でなおかつBANDの新たなる一面を得た
新しくも恐ろしい、つまり凄い一枚が完成するとは。
これは賢い選択だ。